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なぜインプラントが抜ける?「歯ぐきの質」がインプラントの寿命を左右する!

インプラント治療が終わった後、当院では患者様に歯科医院での定期的なメンテナンスを継続するようお願いしています。
それと同時に重要なのが、インプラント周囲の「角化歯肉(かくかしにく/Keratinized Tissue)」の状態を確認し、必要であれば整備することです。
角化歯肉とは何か|なぜ重要なのか
頬粘膜は可動性が高く柔らかい組織であるため、インプラントの周囲に迫ってくることがあります。そうなると、以下のような問題が起きやすくなります。
- 頬が動くたびにインプラント周囲の歯肉が引っ張られる
- 歯ブラシを当てると痛みが生じる
- 頬を引っ張ると、奥歯付近に帯が出てきますが、これがインプラントの近くへ入り込んで、ブラシの邪魔をする
- 以上のようなことから、頬側のインプラント周囲が十分に清掃できなくなり、汚れが蓄積する
- そこからインプラント周囲炎へと発展してしまい、インプラント周囲の骨が溶けて抜けてしまう
角化歯肉は天然歯の周囲にある硬くしっかりとした歯肉で、外部刺激に強く清掃性も高い特性を持っています。この組織がインプラント周囲を守ることで、長期的な安定が保たれます。
【症例①】インプラント設置後に角化歯肉移植を行ったケース
治療法の遊離歯肉移植については後半に解説します。

(右) インプラント設置後。角化した歯肉が完全になくなり、口の開け閉めに連動し、インプラント周囲粘膜が動いてしまう状態でした。



角化歯肉が不足する主な原因
当院では、以下のような状況で角化歯肉の不足が問題になることがあります。
1. 粘膜の帯(頬小帯)が太く入り込んでいる場合
頬を引っ張ると、奥歯付近に帯が出てきますが、これが歯の近くへ入り込んできます。歯を磨くときに邪魔になり、毎回汚れが残りますので、長期のインパクトは大きいです。
2. 骨増生処置(GBR)を行った場合
抜歯後に骨を増やす処置では、頬側の歯肉を引っ張るため、術後に角化歯肉の幅が失われやすくなります。
3. 抜歯時に骨を温存する処置が行われなかった場合
4. 入れ歯を長期使用していた場合
骨が吸収するだけではなく、歯肉が薄くなってしまうことがあります。
5. もともと角化歯肉が少ない場合
インプラントではなく、ご自身の歯にも歯肉不足は起こり得ます。一見問題なさそうに見えても、長期的に使用するためには角化歯肉の移植が有効とされています。
治療法|遊離歯肉移植術(FGG)
角化歯肉が不足している場合には、口蓋(上顎の内側)から歯肉を採取し、インプラント周囲に移植する「遊離歯肉移植術(Free Gingival Graft)」を行います。この処置は歯周病専門医が最も得意とする治療の一つであり、当院でも必要に応じて行っています。記事の前半で紹介した方法です。
【症例②】インプラント埋入と同時に移植を行ったケース
この患者様は、もともと角化歯肉が少ない歯を抜歯した方です。骨造成を行ったうえでインプラントを埋入する際に、同時に角化歯肉の移植も実施しました。

(右) 頬の帯状の粘膜が、インプラントを設置する部分に入り込んでいます。


よくあるご質問(痛みや術後について)
「歯肉の移植」と聞くと、少し怖いイメージを持たれるかもしれません。患者様からよくいただくご質問にお答えします。
Q. 移植手術は痛いですか? 手術中は麻酔が効いているため、痛みを感じることはありません。術後は、歯肉を採取した上顎の部分に一時的に「口内炎」のようなヒリヒリとした痛みが出ることがありますが、2週間程度で落ち着きます。歯肉採取部はマウスピースを術中から装着し、食事中に食べ物から傷口を保護するために使っていただけます。
Q. 治療期間はどのくらいですか? 移植した歯肉が周囲の組織と完全に馴染むまで、約1ヶ月程度の期間を見ていただきます。その間、過度な刺激を与えないよう注意が必要ですが、お食事などの日常生活に大きな支障はありません。
Q. すべての症例で移植が必要ですか? いいえ、必ずしも全員に必要ではありません。もともと丈夫な歯肉がある方はメンテナンスに移行できます。長期的に見てリスクが高いと判断した場合のみ、移植をご提案しています。
まとめ
当院では、インプラントをただ埋入するだけでなく、周囲の環境も整備してなるべく長く使っていただけるよう努めています。
角化歯肉の状態はインプラントの寿命を大きく左右します。「インプラント後のケアが心配」「歯肉の状態が気になる」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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▶ 当院のインプラント治療について|アメリカ歯周病インプラント外科専門医による診察
文責:藤井貴寛(ふじい たかひろ)
Diplomate of the American Board of Periodontology
アメリカ歯周病・インプラント外科 ボード認定専門医
参考文献
Linkevicius T, Puisys A, Steigmann M, Vindasiute E, Linkeviciene L. Influence of Vertical Soft Tissue Thickness on Crestal Bone Changes Around Implants with Platform Switching: A Comparative Clinical Study: Platform Switching Does Not Reduce Bone Loss. Clinical Implant Dentistry and Related Research. 2015 Dec;17(6):1228–36. doi:10.1111/cid.12222
Lin GH, Chan HL, Wang HL. The significance of keratinized mucosa on implant health: a systematic review. J Periodontol. 2013 Dec;84(12):1755-67. doi: 10.1902/jop.2013.120688. Epub 2013 Mar 1. PMID: 23451989.

