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インプラント歯科の「広告・おすすめ・専門医」 その言葉と現実、そして選び方

筆者はアメリカの大学院でインプラント治療を専門に学び、卒業した今も、最新の技術に触れるために欧米の研修へ足を運んでいます。昨年末にヨーロッパでインプラント治療講習に参加した際、仲良くなったフランス人の歯科医師から、こんな話を聞きました。
「フランスでは、病院や歯科医院のネット広告は一切認められていない」
理由を聞いて、なるほどと思いました。医療の質ではなく、「広告の強さ」によって患者さんが誘導されてしまう状況を防ぐためだそうです。「医療は広告では評価できない」という強い意志を感じるこの規制は、フランス政府による非常に賢い判断だと言わざるを得ません。
「野放しに近い」日本の歯科広告
それに引き換え日本の現状、歯科医療に関するネット広告に目を向けると、思わずため息が出てしまいます。ネットは本来、正しい情報を見つけやすくする「便利なツール」であったはずです。しかし現在、歯科に関する検索結果は「医療の質」ではなく、「広告費」によって左右されています。つまり、「医療」が「声の大きい広告」に支配されてしまっているのが、今のネットの現状です。そして、その仕組みの中にいる私自身も、今は広告を使わざるを得ない立場にあります。
だからこそ今回は、そうした日本の歯科医療のネット広告の現状について、あえて率直に書いてみたいと思います。特にインプラント治療のように、医院選びが結果に大きく影響する分野では、この問題はより深刻です。
「おすすめ歯科医院」は、誰が決めているのか
「インプラント 歯科医 選び方」「インプラント 名医」といった言葉でインターネット検索をすると、
「名医」や「おすすめ歯科医院」を紹介するサイトが数多く表示されます。ですが冷静に考えてみると、その「おすすめ」は一体、何を基準に決められているのでしょうか。
多くの歯科ポータルサイトでは、ランキングが広告費によって左右される仕組みが採られています。上位に表示されているからといって、医療の質が高いことを意味するわけではありません。また、その「おすすめ」を選んでいるのが歯科医師であるとは限らない点も、あまり知られていません。
最近はステマ規制も厳しくなりランキングを装う広告には「広告」「PR」表示が必須となりました。しかし、実際には画面の端に小さく、あるいは背景に馴染むような色で、あえて気づきにくいように配置されていることがほとんどです。 これらは規制の強いアメリカやヨーロッパでは、不誠実な広告とされ是正勧告の対象です。しかし日本の規制は、まだ患者様を守るには不十分と言わざるを得ません。
一方、歯科医院が自ら発信している公式ページを見ると、「年間〇〇例」「症例数多数」といった言葉が踊ります。こちらは一見すると信頼できそうですが、この数字も多くは自己申告です。第三者が検証する仕組みはなく、極端な話、数字はいくらでも盛れてしまいます。
巧妙に隠された広告表記や、検証できない数字。治療の実態を判断することが、とても難しい時代になっています。
美容整形の世界で起きたこと
この構造は、美容整形の分野を見ると分かりやすいかもしれません。一時期、美容整形では広告が過剰に幅を利かせ、派手なキャッチコピーが前面に出る一方で、トラブルが増えた時期がありました。
その結果、「その医師が形成外科専門医かどうか」を患者さん自身が確認する、という動きが広がっています。広告だけで判断するのではなく、「本当に専門的な訓練を受けた医師なのか」という視点を持つ人が増えてきたのです。
「専門医」と「専門にやっている」は、別のものです
ここまで読むと、「では、専門医の歯科医院を選べばいいのではないか?」と考える方も多いのではないでしょうか。残念ながら、この「専門医」という言葉にも注意が必要です。
日本では、資格がなくても「〇〇専門」「〇〇を専門にやっています」といった表現が使われます。その結果、現場ではさまざまな「専門」が混在しています。たとえば、次のようなケースです。
- 専門医の資格を持っていないにもかかわらず、「専門にやっているから専門医」と説明されるケース
- 実際にはその治療を一度しか行ったことがないにもかかわらず、ホームページ上では「専門医」と表現されているケース
- 専門医とは名乗らず、「専門医院」と名乗るケース
こうした状況では、どのような訓練を受け、どの程度の経験を積み、どのような評価を経てきたのかが、患者さんには非常に見えにくくなります。本来、学会が定めた基準を満たし、他の歯科医師から専門性を認められて認定される「専門医資格」とは、言葉として使われている「専門」とは性質が異なるものです。
インプラント治療が専門と謳っていても、その専門性の根拠がどこにあるのかは、患者さんには見えにくいのが現実です。
では、執刀医はどうやって選べばいいのでしょうか

そう考えると、完璧に信頼できる指標は実はほとんどありません。
- 症例数は自己申告
- 広告は、実態よりも広告費で順位が決まる仕組み
- 専門医という言葉も玉石混交
だからこそ、注目したいのが「第三者による評価」です。具体的には、学会認定の専門医・指導医・認定医などの資格がこれにあたります。専門医資格も万能ではありませんが、多数の歯科医師で構成される学会の認定があるということは、歯科医師本人の自己申告ではなく、他の歯科医師から専門性を認められた証といえます。このことから、比較的ブレにくい客観的指標だといえます。
専門医資格が学会認定かどうか調べるうえで注意したいのは、その資格を認定した学会自体が信頼できるかということです。明確な審査基準の存在、一定規模の学会員数、組織の実体があるかが判断のポイントになります。
インプラント治療を検討している方ほど、「広告」や「症例数」以外の判断軸を知っておく必要があります。もし判断に迷ったら、カウンセリングの際に「これは試験や更新審査がある資格ですか?」と率直に聞いてみても良いでしょう。その問いに対して、誠実に根拠を示してくれる歯科医師こそが、信頼に値するパートナーだと言えます。
最後に
当院のアメリカ歯周病学会の専門医資格は、大学院での手術経験、厳しい試験、そして毎年の更新審査を経て維持されています。学会がこれほど厳しい審査を課しているのは、第三者として専門医の「質」を担保するためです。「審査のプロセスが隠されていない」からこそ、筆者は自信を持って『専門医』を名乗っています。
本来であれば、患者さんがここまで調べなくても済む環境が整うべきだと思います。それでも、判断の拠り所となる視点を知っているかどうかで、見える景色は大きく変わります。
この記事が、その視点を持つきっかけになれば幸いです。
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文責:藤井貴寛(ふじい たかひろ)
Diplomate of the American Board of Periodontology
アメリカ歯周病・インプラント外科 ボード認定専門医


