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舌側の硬いコブの正体は │ アゴの骨の歪みが作る盛り上がり

下顎隆起(かがくりゅうき)とは

患者様の中には「歯ぎしり・食いしばりを自覚している」「舌の横に硬い盛り上がりがある」と相談される方がいらっしゃいます。その“舌側のコブ”は、外骨症という骨の盛り上がりの一種、下顎隆起(Mandibular tori)と呼ばれるものです。ご自身の舌の横を指で触ってみて、ゴツゴツしたふくらみがないか、一度チェックしてみてください。

下顎隆起が起こる原因

骨には、かかる力に合わせて形を変える「リモデリング」という性質があります。強い噛みしめや歯ぎしりが続くと、咀嚼筋が過緊張し、下顎骨の内部には繰り返し曲げ応力がかかります。その結果、骨が折れないように内側(舌側)へ新たに骨が添加され、舌で触れるとコブのように感じる下顎隆起として現れます。いわば、骨が自分の身を守るために作った「防御反応」の一つと考えられます。

下顎隆起が問題となるケース

下顎隆起そのものは良性で、痛みも出ず経過観察でよいことも多いです。ただし、大きさや位置によっては、次のような場面で治療の対象になることがあります。

① 歯磨きがしにくく、歯周病・インプラント周囲炎のリスクが上がる場合

下顎隆起の周囲は歯ブラシの毛先が当たりづらく、プラーク(汚れ)が残りやすい部位です。その結果、局所的な歯肉炎・歯周病が起こりやすく、インプラント周囲に存在する場合には、インプラント周囲炎のリスク因子となることがあります。見た目には小さなコブでも、長期的なメインテナンス性を考えると無視できないことがあります。

インプラント治療後のトラブルであるインプラント周囲炎については、こちらのページで詳しく解説しています。
インプラント周囲炎について|アメリカ歯周病・インプラント外科 ボード認定専門医による解説
米国歯周病専門医によるインプラント設計|周囲炎リスクを最小限に抑えるために考えるべきこと

② 外傷による潰瘍や「骨の露出」が起こる場合

隆起の表面は粘膜が薄く、硬い食べ物や歯ブラシ、入れ歯・マウスピースなどが当たることで潰瘍ができやすい部分です。潰瘍が深くなると骨が露出し、しみるような痛みや感染が長引くことがあります。特にビスフォスフォネート製剤などを服用中の方では、骨の露出が治りにくくなることも報告されており、注意が必要です。同じ場所に潰瘍を繰り返す場合や、治りが悪い場合には、下顎隆起の除去が選択肢となります。

③ 睡眠時無呼吸症候群との関係

欧米の研究では、大きな下顎隆起が舌を内側から押し出し、舌のスペース(舌房)を狭くすることで、睡眠時無呼吸症候群(OSA)と関連する可能性が指摘されています。まだまだ研究を追いかける必要がありますが、下顎隆起が「いびきが大きい」「寝ている間に呼吸が止まっていると言われた」「日中の眠気が強い」といった症状を悪化させている可能性があるかもしれません。

実際の下顎隆起除去症例

ここでは、下顎隆起によって歯ブラシが干渉し、今後インプラントを清掃していく上で邪魔になると判断された症例をご紹介します。インプラントを長持ちさせるためには、「埋めた瞬間」だけでなく「その後何十年と磨き続けられるか」が非常に重要です。

この症例では、下顎隆起を除去したうえでインプラントを埋入し、将来、インプラントのまわりに汚れがたまること防ぐため、歯ブラシの通り道を確保しています。当院では、単にインプラントを入れるだけではなく、数年先・十数年先に起こりうるトラブルを先回りして治療計画を立てることを大切にしています。

当院の下顎隆起除去の特徴

当院では、超音波骨切削装置(ピエゾサージェリー)を導入しています。この装置は軟らかい歯肉などの軟組織は切れず、硬い骨だけを選択的に削ることができるため、歯肉をできるだけ傷つけずに骨だけを滑らかに整えることが可能です。その結果、術後の腫れや痛みを抑えながら、安全に下顎隆起を除去することができます。

米国で専門教育を受けた専門医として、歯周病・インプラント周囲炎の予防まで見据えた包括的な治療を行っています。「舌で触るとコブのようなものがある」「歯磨きがしづらい」「インプラントの清掃が不安」といったお悩みがありましたら、まずは一度ご相談ください。

文責:藤井貴寛(ふじい たかひろ)
Diplomate of the American Board of Periodontology
アメリカ歯周病・インプラント外科 ボード認定専門医

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