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歯ぐきが腫れて痛い…これって放っておいても大丈夫?|よくあるご相談に米国歯周病専門医が回答

「歯ぐきが腫れてるんですが、痛みが出たり引いたりで…様子を見てても大丈夫ですか?」
これは患者さんから非常によくいただくご質問のひとつです。実は、歯ぐきの腫れにはいくつかの原因があり、放置してよいケースはほとんどありません。

歯ぐきの腫れは、大きく4つに分類されます

「歯ぐきが腫れている」という場合に考えられるのは以下の4つです。

分類 説明
歯周病によるもの 歯根の周囲に細菌が増殖し、慢性的な炎症が起きている状態です。プラークの磨き残しから始まります。
虫歯が神経を超えて、根の先まで細菌が到達した場合 根の先に膿がたまり、腫れや痛みを引き起こします。いわゆる神経を抜く治療(根管治療)が必要です。
歯根が割れている場合 亀裂から細菌が侵入し、腫れが起こります。原則として歯を残すことはできず、抜歯になります。
良性腫瘍・悪性腫瘍などによるもの 頻度は低いですが、口腔外科での専門的な診察が必要です。当院ではメンテナンス時にもチェックしており、実際に初期段階で寛解された患者さんもいらっしゃいます。

いずれのケースでも、自然治癒はほとんど期待できず、専門的な診断と治療が必要です。

歯磨き粉で歯周病が治る?それは誤解です

テレビCMでは「歯周病用の歯磨き粉」を使えば、あたかも歯周病が治るような印象を与えることがあります。
確かに、軽度の歯肉“炎”(Gingivitis)であれば、ブラッシングを1週間ほどしっかり行えば治ります
しかし、一度、歯の周囲の骨が溶け始める「歯周“病”(Periodontitis)」に進行してしまうと、これは例えるなら“火山の噴火にバケツ一杯の水をかけるようなもの”です。

実際の歯周病では、歯周ポケットの奥深くに強固な歯石が歯根にへばりついています
このような歯石は、強力な超音波スケーラーを用いても取り切れないことが多く、外科的に歯ぐきを開いて除去する必要があるケースもあります。

また、歯ブラシは歯と歯ぐきの間に最大でも1.5mm程度しか届きません
歯周病のステージ2(中等度)になると、歯周ポケットの深さは5mm以上になることもあり、歯根(約12mm)の1/3以上が既に溶けている状態です。
この段階では、いくら丁寧にブラッシングしても追いつかないのです。

右上前歯の歯ぐきが腫れています

細菌の詰まった歯石が付着しており、隣の歯に比べて骨が溶けています。

術後1月 骨の再生を行ったことで、細菌が増えない環境を整えました。

くわしくは ▶ 「症例|エムドゲインと骨補填材を用いた歯周組織再生療法」 をご覧ください。

腫れを放置すると、どうなるのか?

「しばらくしたら痛みが引いたから大丈夫だと思っていた」
そう話される患者さんは少なくありません。

確かに、腫れや痛みは一時的に引くこともあります。
しかしこれは、症状が治まったのではなく、慢性化して体が慣れてしまっただけという場合が多くあります。

とくに歯周病の場合、炎症が深部に進行していても自覚症状がほとんど出ないことがあり、気づかないうちに歯を支える骨が吸収されていきます

専門的な検査で、腫れの「本当の原因」を見極める

歯ぐきの腫れが歯周病によるものなのか、根の病気や亀裂なのか、あるいは腫瘍性疾患なのか——
これは見た目だけで判断することは困難です。

当院では、レントゲン・歯周ポケット検査・必要に応じたCT診断を行い、正確な診断と最適な治療計画をご提案しています。

歯を守るために、今できること

腫れや違和感を放置せず、できるだけ早い段階で受診し、根本原因にアプローチすることが大切です。

「こんなことで受診していいのかな…?」と迷う必要はありません。
気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。

▶ あわせてご覧ください

当院の歯周病治療についてはこちら|アメリカ歯周病専門医による診療

文責:藤井貴寛(ふじい たかひろ)
Diplomate of the American Board of Periodontology
アメリカ歯周病・インプラント外科 ボード認定専門医

参考文献

  • Löe, H., Theilade, E., & Jensen, S. B. (1965). Experimental gingivitis in man. Journal of Periodontology, 36(3), 177–187.
  • Lindhe, J., Lang, N. P., & Karring, T. (Eds.). (2008). Clinical periodontology and implant dentistry (5th ed.). Blackwell Publishing

投稿症例について
治療期間・治療回数: 施術1日 (フォローアップ 3ヶ月) 1回
治療費用: ¥169,400 (税込)
リスク・副作用: 腫脹、疼痛、術後感染、歯の動揺、歯肉退縮にともなう知覚過敏

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