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歯が減ると“食べる力”が落ちる?|入れ歯と栄養の話

年齢を重ねると、歯の本数が減り、やむを得ず入れ歯を選択される方もいらっしゃいます。しかし、「歯がなくても入れ歯があるから大丈夫」と考えるのは、少し危険かもしれません。
入れ歯では“かむ力”が取り戻せない?
実際のところ、入れ歯ではかむ力が天然の歯と比べて約75%も低下するといわれています。さらに、15年後には97%低下するという報告もあります。また、「やわらかい物しか食べられない」と感じている方は3割近くにのぼります。
これでは、肉や野菜などのしっかり噛む食品を敬遠し、やわらかく糖質の多い食べ物に偏ってしまうのも無理はありません。

入れ歯では十分に噛めず、やわらかい炭水化物をたべてしまいがち。口の中のヌメヌメ、細菌性プラークの元です。
入れ歯による不調は、口の中だけにとどまりません
ある調査によると、入れ歯を使用している方の28%が胃腸薬を常用しているとされています。噛めないことによる咀嚼不足や、食物繊維の摂取不足が便通の乱れを引き起こすと考えられます。また、義歯を使っている人ほど、そうでない人よりも薬を多く服用している傾向も見られます。「食べにくさ」は単なる不便ではなく、全身の健康状態を左右する大きな要因であることがわかります。

入れ歯を使うことが悪いのではなく、入れ歯が必要になる状態では、十分に食事ができないと考えてください。
歯の健康は“炭水化物”と深くつながっています
1930年代の報告では、肉中心の伝統的な食生活を送っていた北極圏のエスキモーの人々には、虫歯や歯周病がほとんど見られなかったとされています。一方で、コメや小麦などの炭水化物が食生活に加わることで、虫歯や歯周病のリスクが高まるという指摘もあります。こうしたことからも、噛めない状態が続くことで炭水化物の摂取が増え、残った歯の虫歯・歯周病がさらに悪化し歯が抜けていく悪循環に陥ることがわかります。

多くの歯を失う前に、インプラントという選択を
歯を失ったとき、「とりあえず入れ歯で…」と考えるのではなく、しっかり噛める手段を早めに検討することが、健康寿命をのばす鍵になります。たとえ1本の歯を失っただけでも、安易にブリッジを選択すると、将来的に支えとなる歯が虫歯や歯周病になったり、割れたりすることで、入れ歯へのカウントダウンが始まってしまう可能性があります。インプラントを選択することで、残っている歯への負担を減らし、将来の歯の喪失を防げるかもしれません。

健康寿命をのばすために、しっかり噛める口を
当院では、ただ「歯を補う」だけでなく、長くしっかり噛める口腔環境の回復を重視しています。見た目の回復はもちろん、噛む力を取り戻すことが、体力・免疫・生活の質のすべてに影響すると考えています。
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▶ 当院のインプラント治療について|アメリカ歯周病インプラント外科専門医による診察
文責:藤井貴寛(ふじい たかひろ)
Diplomate of the American Board of Periodontology
アメリカ歯周病・インプラント外科 ボード認定専門医
参考文献
Misch, C. E. (2015). Dental Implant Prosthetics (2nd ed.). Elsevier Mosby.
Shen, J., Qian, S., Huang, L., Tao, Y., Chen, H., Deng, K., Yang, F., Zong, G., Zheng, Y., Wang, X., Tonetti, M., Yuan, C. (2023). Association of the number of natural teeth with dietary diversity and nutritional status in older adults: A cross-sectional study in China. Journal of Clinical Periodontology, 50(2), 242–251. https://doi.org/10.1111/jcpe.13728
